モダンで「赤茶単」デッキが急浮上中。構築予算はまさかの12万円。バーンデッキは超高額ア―キタイプになってメタゲームを生き延びるのか。


こんな内容の記事です
  • ここ1~2週間のモダンで活躍を見せるモダンデッキ「赤茶単」についてのあれこれを綴りました。
  • サンプルリストも掲載してあります。

2023年からのモダンメタゲームで「赤茶単(海外メディアでは"Mono-Red Artifact"と掲載)」が少しずつ頭角を現しています。

メタゲーム寡占度(~2023/1/29)

  • 直近2週間(MTG DECKS):1.07%
  • 直近2週間(MTG GOLDFISH):1.6%
  • 直近1週間(MTG GOLDFISH):6.0%

以前より存在していたマイナーアーキタイプでしたが、これほどの結果を残すようになったのは宙に浮くようになったモダンのゲーム性があるのでしょうか。

モダンでは余程のカードパワーがない限り地上のクリーチャーで対話型のゲームを展開することが難しくなったため、飛行クリーチャー、バーンダメージ、コンボなど空中での応酬に重きが置かれるようになりました。そんな現メタゲームにおいて、盤面での駆け引きをスキップしてバーンダメージで決着できる「赤茶単」がフィーチャーされるのは必然かもしれませんね。


ここ10日ほどで急速に勢力を伸ばしているア―キタイプです!

サンプルデッキリスト

プレイヤー:Teston
フォーマット: Modern
イベント: Modern League 2023-01-27
戦績:5-0

メイン

クリーチャー

4 敏捷なこそ泥、ラガバン ¥ 12890
4 ヴォルダーレンの美食家 ¥ 40
3 ドラゴンの怒りの媒介者 ¥ 240
1 シヴの壊滅者 ¥ 620
4 ボーマットの急使 ¥ 120

呪文

4 ミシュラのガラクタ ¥ 640
1 ミシュラの研究机 ¥ 80
1 黄鉄の呪文爆弾 ¥ 60
1 バネ葉の太鼓 ¥ 190
4 実験統合機 ¥ 70
4 爆片破 ¥ 110
4 感電破 ¥ 340
4 稲妻 ¥ 440
2 舞台照らし ¥ 150

土地

4 ウルザの物語 ¥ 5940
1 ラムナプの遺跡 ¥ 230
1 血に染まりし城砦、真火 ¥ 1210
1 反逆のるつぼ、霜剣山 ¥ 400
4 沸騰する小湖 ¥ 5050
3 バグベアの居住地 ¥ 1550
5

サイドボード

1 湧き出る源、ジェガンサ ¥ 250
1 真髄の針 ¥ 450
1 影槍 ¥ 2190
1 万物の姿、オルヴァール ¥ 1800
2 虚空の鏡 ¥ 220
2 高山の月 ¥ 750
2 破壊放題 ¥ 980
1 石の脳 ¥ 630
4 大祖始の遺産 ¥ 890

予算

メイン:¥ 110,020
サイドボード:¥12,780
合計:¥ 123,800

(参考価格は2023/1/29現在のWisdom Guildトリム平均を切り上げたもの)


バーンデッキの亜流といったところか、《感電破》《爆片破》みたいなマナ効率にすぐれたバーン呪文で迅速に焼き切ってしまおうというワケだ。
地上戦の過剰な圧迫感が生み出した魔物みたいなデッキだな。
今のモダンの地上戦は、Tier2デッキには相当くるしいですからね…
続唱サイにドメインもいて…4Cもパワフルですし。
マトモに戦局のやり取りをしていないでさっさとバーンダメージでカタをつけたくなるマッチが多いよな。
ア―キタイプ数が多いのも難しいところだ。TCGでは概して非対話型のデッキの方が多様性環境を勝ち抜きやすい。
仮想敵が多い環境で普通のビートダウンデッキを使うとなると、その仮想敵一つ一つの勝ち筋を把握しておく必要がありますからね。カードパワーがあればミスや知識不足をカバーできる場面もありますが、カードパワーに恵まれないフェアデッキは知識もスキルも要求されて過酷です。
だな。
この真っ赤な札束がバーンにとって代わってしまうと初心者層にとってツラいことになるが、現にそうなっているから少し不安だ。



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アーティファクトシナジーで燃え上がるバーンデッキ

なぜ高額なのか?

《敏捷なこそ泥、ラガバン》《ウルザの物語》《沸騰する小湖》の3種のカードが非常に高額であり、リストの総額を引き上げています。


安価に構築する方法はないのか?

詳しくは後述しますが、上記の高額カードがデッキのシナジーにおいて代替不能な役割を果たしており、代用カードを立てて構築することは難しいように思われます。

強引に代用カードを立てて構築することもできなくもないのですが、そうすれば速度が落ちてしまい、わざわざバーンではなく赤茶単を構築するインセンティブが失せてしまうので賢明とは言えないでしょう。

予算を抑えたいのであれば、今使っているバーンをフルバーン型に寄せる方が堅実かもしれません。


《継ぎ接ぎ自動機械》と《増員された浪人》を絡めたタイプとか、ブリッジランドを使用したタイプとか、予算をおさえた構築を色々考えてみたのですがやっぱり厳しかったです…



各高額カードが採用されるわけ

敏捷なこそ泥、ラガバン

伝説のクリーチャー - 猿・海賊 {赤}
2/1
敏捷なこそ泥、ラガバンがプレイヤー1人に戦闘ダメージを与えるたび、宝物・トークン1つを生成し、そのプレイヤーのライブラリーの一番上のカードを追放する。ターン終了時まで、あなたはそのカードを唱えてもよい。
疾駆{1}{赤}(あなたはこの呪文を、これの疾駆コストで唱えてもよい。そうしたなら、これは速攻を得て、次の終了ステップの開始時に、これを戦場からオーナーの手札に戻す。)

単純に強力であることもありますが、アーティファクトシナジーに噛むことができる1マナのウィニーであることが一番の採用理由であると考えられます。

1マナであり、モダンリーガルであり、赤か無色であるパワー2以上のアーティファクト・クリーチャーというのは5種しか存在しません。
1マナかつパワー2以上かつ赤/無色かつアーティファクトかつクリーチャーのカード一覧(Scryfall)

その内《剃刀草の幕》と《スレイベンのガーゴイル》とは防衛持ちであり、《結束した構築物》は単独で攻撃できないデメリットがあり、アグレッシブなデッキへの採用に向きません。

比較的まともなのは《氷皮ゴーレム》と《増員された浪人》でしょうか。 いずれも2/2サイズなので、1/1クリーチャーや《はらわた撃ち》などのラガバン対策への耐性を持ちます。

《氷皮ゴーレム》はマナコストが氷雪マナになっているため、赤単デッキの特権とも言える単色特殊地形を運用を断念する必要があるのがネックになります。

もう一方の《増員された浪人》は非常に優秀なアタッカーなのですが、ラガバンとちがってヒット&アウェイ「ではない」攻め方ができません。いちいち手札に帰投するマナとテンポのロスが、アーティファクトとのシナジーでボロスバーンを超えたスピードを実現しようとする赤茶単のコンセプトとのミスマッチを引き起こす懸念があります。

スロットを奪い合うライバルの貧弱さとシナジーの関係上、ラガバンの採用を避けて通ることはできないのでしょうね。



ウルザの物語

土地・エンチャント - ウルザの・英雄譚
(この英雄譚が出た際とあなたのドロー・ステップの後に、伝承カウンターを1個加える。IIIの後に、生け贄に捧げる。)
I ― ウルザの物語は「:{1}を加える。」を得る。
II ― ウルザの物語は「{2}, :『このクリーチャーは、あなたがコントロールしているアーティファクト1つにつき+1/+1の修整を受ける。』を持つ無色の0/0の構築物・アーティファクト・クリーチャー・トークン1体を生成する。」を得る。
III ― あなたのライブラリーからマナ・コストが0か1のアーティファクト・カード1枚を探し、戦場に出す。その後、ライブラリーを切り直す。

《ウルザの物語》はデッキから1マナアーティファクトをサーチする手段であり、リスト中唯一のエンチャントでもあります。

3章(場合によっては2章も)によってアーティファクトシナジーに貢献しつつ、自身のエンチャントタイプで《ドラゴンの怒りの媒介者》の昂揚にも貢献するという「一人二役」は他のカードでは代えが効きません。しかもその二役を土地スロットでこなせるとなればなおさら代役はいないでしょう。


《ミシュラの研究机》を持ってきてリソース回復したり、《黄鉄の呪文爆弾》を持ってきて残りのライフを詰めたり、本当に器用なカードですよね。
無色1マナのアーティファクトは1枚入っていれば十分機能するようになるから、有効なサイドパーツを複数種類採用できるのも強みだよな。


沸騰する小湖

土地
, 1点のライフを支払う, 沸騰する小湖を生け贄に捧げる:あなたのライブラリーから島か山であるカード1枚を探し、戦場に出す。その後、ライブラリーを切り直す。

いわゆるフェッチランドです。
赤単デッキのフェッチランドは《ドラゴンの怒りの媒介者》の昂揚達成のサポートと、《ミシュラのガラクタ》で見たライブラリトップの不要牌をシャッフルで弾く役割を担います。

《真髄の針》を意識してフェッチランドの種類を散らしたりすることもありますが、ランデス目的で針がサイドインされることは稀なので絶対に散らす必要があるというわけではないと思います。(まれに針でフェッチランドを封じてくるプレイヤーもいるのでサイド後のマリガンには要注意です。)

真髄の針

アーティファクト {1}
真髄の針が戦場に出るに際し、カードの名前1つを選ぶ。
その選ばれた名前を持つ発生源の起動型能力は、それがマナ能力でないかぎり起動できない。

赤いフェッチランドの中では《乾燥台地》が最も安価なのですが、《沸騰する小湖》にしておくとデッキを「イゼット・マークタイド」に偽装できる効果が見込めるので《沸騰する小湖》を優先するプレイヤーもいます。

これはボロスバーンにおいても同様で、《乾燥台地》を一切採用せずに《沸騰する小湖》《血染めのぬかるみ》《焦熱島嶼域》など一見別のアーキタイプであるように思わせる色の土地を優先的に採用したリストも散見されます。

否が応でも《ドラゴンの怒りの媒介者》の諜報で土地を弾くことになるから、フェッチは無くても割とどうにかなるんだよな。
フェッチがあったことによって昂揚達成が1ターン早くなることもままあるので、あった方が良いことには変わりないんですけどね。



個人的注目カード

ヴォルダーレンの美食家

クリーチャー - 吸血鬼 {赤}
1/1
ヴォルダーレンの美食家が戦場に出たとき、これは各対戦相手にそれぞれ1点のダメージを与える。血・トークン1つを生成する。(それは「{1}, , カード1枚を捨てる, このアーティファクトを生け贄に捧げる:カード1枚を引く。」を持つアーティファクトである。)

個人的に今一番アツいコモンです。
現在進行形で新しい格安スカルシュート(予算1万円ほど)を試しているのですが、そこでこの《ヴォルダーレンの美食家》を採用していて非常に良い感触を得ています。

ETBによるバーンダメージで《舞台照らし》の絢爛を誘発できる他、血トークンがアーティファクトシナジーに寄与し、1/1の本体がラガバンを牽制になる。あらゆる点で可能性を感じさせる1枚になっています。

舞台照らし

ソーサリー {2}{赤}
絢爛{赤}(このターンに対戦相手がライフを失っていたなら、あなたはこの呪文を、これのマナ・コストではなく絢爛コストで唱えてもよい。)
あなたのライブラリーの一番上からカードを2枚追放する。次のあなたのターンの終了時まで、あなたはそれらのカードをプレイしてもよい。

ラガバンや《ドラゴンの怒りの媒介者》にも言えることですが、1マナのクリーチャーが2つ3つの機能を有しているということが強力であり、それが今1マナのクリーチャーに求められる水準であるとも感じています。

これは《広がりゆく海》としてもアタッカーとしても強力な《激浪の形成師》にも言えることですね。

個人的におすすめしたいのが、《楕円競走の無謀者》とのコンビネーション。血トークンの生成によって《楕円競走の無謀者》を墓地から回収できるほか、簡単に回収できる《楕円競走の無謀者》を血トークンの起動コストに充てることで擬似的にアドバンテージを得るのも良いでしょう。

楕円競走の無謀者

クリーチャー - 人間・操縦士 {3}{黒}
4/2
真髄の針が戦場に出るに際し、カードの名前1つを選ぶ。
その選ばれた名前を持つ発生源の起動型能力は、それがマナ能力でないかぎり起動できない。

同じくルーティングを持っていてアーティファクト・クリーチャーである《屑鉄造りの雑種犬》とで《楕円競走の無謀者》を使い回せば相当な量リソースを温存できます。

ここへ《楕円競走の無謀者》とのコンボ※で有名な《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》も加われば、6点ラインの火力が飛んで窮屈な盤面に風穴が開きます。

※《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》のETBがサーチしてくる《地獄料理書》の起動型能力で《楕円競争の無謀者》を捨てれば、食べ物トークンが生成されることによって《楕円競争の無謀者》の能力が誘発して即座に手札に戻ってくる。ゆえに実質的にノーコストで《地獄料理書》から食べ物トークンを生成できる。こうして生成した食べ物トークンを使って《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》の起動型能力を使用すれば今度はノーコストで除去が使用できたことになる…というコンボ。非常に強力なので、原則この3枚はセットで運用することになる。

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シヴの壊滅者

クリーチャー - ドラゴン・ハイドラ {X}{赤}
0/0
飛行、速攻
シヴの壊滅者は、+1/+1カウンターX個が置かれた状態で戦場に出る。

以前記事で取り上げたクリーチャーですが、まさかモダンのトップメタを脅かすデッキのパーツになっているとは思いもよりませんでした。
リンク
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ラガバンの宝箱でXの値を大きくできるので採用されているのでしょう。 飛行速攻が強い環境なので雑に投げても結構なライフを削ってくれそうです。


今のモダンで飛行クリーチャーが満載されているのはイゼット・マークタイドくらいのものですからね。飛行速攻は以前よりもずっと信頼のおけるクロックになっています。
飛行や対空戦力が入ったデッキ自体は多数あるんだが、少数なら除去で問題なく対処できるからな。


ドラゴンの怒りの媒介者

クリーチャー - 人間・シャーマン {赤}
1/1
あなたがクリーチャーでない呪文を唱えるたび、諜報1を行う。(あなたのライブラリーの一番上のカードを見る。あなたはそのカードをあなたの墓地に置いてもよい。)
昂揚 ― あなたの墓地にあるカードの中に4種類以上のカード・タイプがあるかぎり、ドラゴンの怒りの媒介者は+2/+2の修整を受け、飛行を持ち、各戦闘で可能なら攻撃する。

意外とバーンとの相性が良いクリーチャーです。

バーンデッキは有効牌を消費しながらライフを詰めて行くデッキなので、当然ライブラリトップから不要牌を引けば引くほど勝利が遠のきます。《ドラゴンの怒りの媒介者》は諜報で不要牌を弾いてデッキの安定に寄与してくれます。

ライブラリから続々不要牌を弾いて、バーン呪文など有効牌を引けるようにすれば結果的にデッキスピードの向上にも繋がります。


飛行持ちであるのも現環境的には追い風ですね。



爆片破

インスタント {1}{赤}
爆片破を唱えるための追加コストとして、アーティファクトを1つ生け贄に捧げる。 クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。爆片破はそれに5点のダメージを与える。

以前自分も《爆片破》や《感電破》を使用した格安なバーンデッキのリストを考えていたのですが、どうやっても形にならず断念したことがありました。

それがまさかこんな金満デッキとなって環境に浮上してくるとは…

血トークンパワーストーントークンなど、アーティファクトのトークンを生成するカードとはすべからくシナジーするので、今後ますます勢いを増すカードだと思います。懐に余裕のある方は、はやいうちに確保しておいた方が良いかもしれませんね。



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追記:モダンチャンレンジで赤茶単が首位獲得

Modern Challenge 2023-01-28, 1st Place, 7-0 by Slasher21

モダンチャンレンジにて赤茶単が首位を獲ったのでその旨を補足しておきます。 リストは《ボーマットの急使》を1枚にし、《僧院の速槍》を4枚採用した果敢とバーンの折衷型のリストでした。

僧院の速槍

クリーチャー - 人間・モンク {赤}
1/2
速攻
果敢(あなたがクリーチャーでない呪文を1つ唱えるたび、ターン終了時まで、このクリーチャーは+1/+1の修整を受ける。)





機械兵団の予約はじまる

『機械兵団の進軍』の予約がamazonではじまっています。

統率者デッキやバンドルコンプリートエディションなど、供給が安定しない製品に興味がある方は予約を確認しておいた方がいいかもしれません。

まだほとんど何も情報が出ていないので、セット/コレクター・ブースターの予約は毎セット必ず購入するという方以外には、現段階での予約はおすすめできないというのが率直な思いです。

同じ位置づけに当たるであろう『灯争大戦』のことを思えば相当強力なセットになるでしょうが、セット・ブースターの供給は多いのでここで冒険を冒す必要はないでしょう。
仮に供給を圧倒的に上回る消費があったとして、それで市場の未開封製品の在庫が枯れ果てたとしても、一部のトップレア以外まるで値がつかなくなるというお約束の展開が待っていること思えば尚更のことだと思います。




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らすとさば
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