生成AI不使用に関するポリシー

生成AIによる生成物を使用いたしません

本サイト掲載記事の大部分は、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社(Wizards of the Coast LLC)制作のトレーディング・カードゲーム(TCG)に関するものですが、昨今TCG制作に関わるアーティストの多くが生成AIに対して抗議をしておられます。

その抗議の主な内容が「自分たち個々人が持つ権利が、生成AIに関する企業らによって踏みにじられている」というものです。

当ウェブマガジン管理人としましては、上記主張には一定の妥当性があると考えております。

いまや広く知られるところとなりましたが、ごく一部の例外を除いてほとんどの生成AI開発企業らは、無数のWEBサイトに対して頻繁なクローリング、スクレイピングを行い、そこに掲載されている著作物を商業のために無断で利活用しております。あるいは、上に限らず、常識ないしは道義からして肯定しかねるような方法で他者から著作物を収集しております。そうした著作物の利活用によって生じた成果が、個々の著作者に対して還流される仕組みもありません。さらに困ったことには、著作者らにはそれを拒否する手段も与えられていません。このように、著作者と生成AI開発企業との間に偏った力関係が生じてている実情があります。

さらに深刻なこととして、アーティストが抗議を行ったことに対する報復として、個々人の生成AI利用者らがアーティストに対して執拗な攻撃を行っている例も頻繁に見受けられます。これにより、激しく消耗してしまっているアーティストの方も少なからずいらっしゃいます。

さて、当ウェブマガジン掲載コンテンツの大半はウィザーズ・オブ・ザ・コースト社が発表する「ファンメイドコンテンツポリシー」に則って、アーティストの方々が制作したカードを引用させていただいている「ファンメイドコンテンツ」としての側面を持ちます。

当ウェブマガジンにおきましては、上記のような悲惨な状況を知りながら、「ファンメイドコンテンツ」の作成のために生成AIによる生成物を嬉々として利用するなどというのは、まさに不義理であり、到底あり得ない行為だろうと考えております。

つきましては、当ウェブマガジンにおいて、生成AIによる生成物を一切使用しないこと、そしてこれまでも使用していないことをここに明言し、アーティストの権利に寄り添ったウェブマガジン運営を継続させていただくものとします。


ウェブマガジン管理人の見解

「大半の生成AIが権利侵害である」という見解こそ一致すれど、何が問題点であるのかということについてアーティスト側は一貫した見解を持ちません。これこそがアーティストが団結して権利闘争に臨めない大きな要因であるとともに、生成AIによる問題そのものを複雑化させている要因であろうとも考えています。

そして、アーティスト個々人の問題意識が曖昧なまま連帯の道筋を探っていることが一層状況を混沌とさせているのではないかと考えましたので、微力ながら問題解決の助けとなることを願って、私個人の生成AIの問題に対する見解をここに表明させていただくこととします。

昨今の生成AIに関する問題点は、
①…「著作物の利活用に際し、十分な合意形成を経ていないこと」
②…「生成AIが、学習元の権利者や著作物に対して競合的な用途で使用されていること」

ではなくて、
③…この①と②を同時に満たすようなAI利用

が現在野放しになっていることにあると、私個人は考えております。

上記こそが生成AI問題の本質であり、アーティストらが最も争点とすべきことである、というが私の考えです。

それ以外にも様々な抗議の主張が(アーティストを筆頭とする)ステークホルダーからなされることがありますが、それらは生成AI問題によって発生した副次的なことで、個別に対策していくべきものがほとんどであろうと考えています。

まず①についてですが、著作者個人のあずかり知らぬところで著作物が商業的に利活用されている状況は、単純に尋常ではないでしょう。

ただし、アメリカのフェアユース規定を参考に日本版フェアユース規定の枠組みが整備されていった際の理念は「著作者の権利を侵害する恐れがなく、そうした意図もないにもかかわらず、現行法制度に抵触する著作物利用に関して、逐次許諾を取らなくても良いようにし、技術発展の助けとしよう」というようなものであったと承知しておりますが、この理念は正しいものだと私も考えております。ゆえに、①だから直ちに侵害的であるとするのは妥当ではない、というのが私のスタンスです。

重要なのは、そのフェアユース規定が守られているのかということでしょう。

②については、
・絵画や映像作品が画像生成に使用される
・文芸作品がシナリオの生成に使用される
・ソースコードがコーディングAIに使用される
といった状況を想定しています。

②のような形での生成AI利用は、著作権者の市場における対価回収機会を損なうばかりでなく、著作権者らの労働者としての立場を危うくする恐れまであります。

ただし、これも同意のもとなされているのなら、当然侵害とはならないはずです。繰り返しになりますが、問題があるのは①と②を同時に満たす生成AI利用(③)にあると考えています。

これまで作り上げてきた著作物が他人によって無断で活用され、それによって著作者自らが苦しい立場に追いやられる不条理を鑑みるに、③はフェアユースであるとは言えないでしょう。日本版フェアユース規定の一翼を担う「改正著作権法30条の4(平成30年度通常国会改正)」の施行時に、日本版フェアユースの適用によって上記のような不条理は生じないものと文化庁から説明がなされた※わけですが、まさにその不条理に多くのアーティストが苛まれている以上、その不条理の原因である③はフェアユースたり得ないのです。

上記問題に対して「技術革新によって一部労働者が市場での立場を失うのは尋常なこと」だと断じる識者もいるようですが、この問題においては個々人が権利を有する物が無断で利用されているという点において特異であり、これまでの通常の技術革新と単純に比較できるものではないはずです。

法的な観点からしても、③には問題があります。③は日本が批准するベルヌ条約の著作物複製の要件である「スリー・ステップ・テスト」に適うものでないことは明白ですが、現行の著作権法30条の4(平成30年度通常国会改正)が国際法に矛盾しないよう整備されたことが当時の文化庁資料に明記されており※、③は日本国内においても違法であると考えられます。

そもそも、国際法に関わらず、著作権法30条の4(平成30年度通常国会改正)が③を認めない法理を意図して改正・施行されたことは当時の資料からも確認できますし※、昨今のアーティストをとりまく不条理な状況が現行法の法理に適うものだとは到底思えません。

※文化庁 著作権法の一部を改正する法律(平成30年法律第30号)について 参考資料『デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定に関する基本的な考え方』ページ8,9
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/h30_hokaisei/pdf/r1406693_17.pdf


2025/5/21 最終改訂




プロフィール

らすとさば
TCGプレイヤーです。主にMTGを安くカジュアルに楽しむ記事を書いています!