もしも幻の第六のオールドエキスパンションが発売されていたら ー 並行世界のMTGを考察する『パラレル:ザ・ギャザリング』


こんな内容の記事です

アルファ版テストプレイヤーのひとりにして、MTG創始者の友人でもあるバリー・ライヒ。
彼が手掛けていた幻のオールドエキスパンション
『スペクトラルカオス』は日の目を浴びぬまま歴史の裏側へと葬られてしまった。

もし『スペクトラルカオス』が発売されていたら、どんなデッキが構築されていたのか?
MTGはどんなゲームになっていたのか?

オールドスクールMTGのコミュニティであるRagingRiverMTGは、この幻のセットのプレイテストシートを独自に入手し、再現イメージまで作り上げて大々的に公開した。

彼らが公開したカードの情報をもとに、「もうひとつのMTG」を紐解いていく…!


  • 日本語カード名および、日本語テキストは「らすとさばTCGレポート」による試訳です。
  • 本記事中の未発売カードの情報及び再現イメージは、RagingRiverMTGさまより引用させていただいたものになります。(公式なカードではないのでご注意ください)
  • カクつきがひどい場合にはそのまま10秒ほどお待ちください。データの読み込みに時間がかかる場合がございます。

前回の記事
『スペクトラルカオス』についてもっと知りたい方はこちらをご覧ください!(生地前半で『スペクトラルカオス』の情報が正しいと思われる根拠などについても紹介しています…!)

(…ここどこだろう?)


(迷子だ。右も左もわからない。知らない路地を近道にするべきじゃなかった…だけど、それだけでこんなにひどい迷子になる?)


(はじめて見るカードショップだ。ずいぶん遠いところまで来ちゃったな…)


(デュアルランド《メサ》強化買い取り中…2000円…これはひどい…)
(そもそも《メサ》なんてデュアルランドあった?)
おい、君。
え…あ、はい?
そこの君だよ。
さっきから挙動不審で右往左往…迷子なのだろう?
同じ青い頭のよしみで案内してやろう。
あ…!
ありがとうございま…え?
は…!?!?
同じ顔…同じ…何者だ!?
え、えぇぇぇぇ!?!?!?



そもそも『スペクトラルカオス』とは?

『スペクトラルカオス』は『レジェンド』の発売前に発売される予定だった幻のセット。その開発を手掛けたのは、MTGの創始者リチャード・ガーフィールドの友人にして、最初期の(つまりアルファ版の)テストプレイヤーでもあったバリー・ライヒでした。

このバリー・ライヒが、有名なミスプリントカードコレクターのキース・アダムスに『スペクトラルカオス』の収録予定カードの情報を託し、そこからRagingRiverMTGへと伝わったために実現したのが"Spectral Chaos"プロジェクト。

このプロジェクトによって、日の目を浴びなかったカードたちが非公式カードとして次々に実現し、衆目に曝されることになります。

本記事はRagingRiverMTGさまが再現した未発売カードを引用させていただきつつ、『スペクトラルカオス』のカードを用いたデッキを構築し、この幻のセットが発売された「もしも」の世界のマジック:ザ・ギャザリングを考えていきます。

『スペクトラルカオス』についての詳細は以下の記事で紹介しています。おおよそ『スペクトラルカオス』についての話が真実であったらしいと判断できる証拠についても触れていますので、気になる方はこちらもご覧ください。

もっと知りたい方はこちら
『スペクトラルカオス』についてもっと知りたい方はこちらをご覧ください!(生地前半で『スペクトラルカオス』の情報が正しいと思われる根拠などについても紹介しています…!)
スペクトラルカオスプロジェクト
Set Size: 429 original playtest card designs (plus some original surprises for fun…)Click here to see the entire set of realized card images. Originally Designed by: Barry Reich Realized by: &





パラレルワールドのMTGを遊ぶ

まさかもうひとりの自分とカードゲームで遊ぶことになるとは…
これ以上ないほどに同感だな。
《メサ》をセット。

メサ

混沌の土地 - 平地・山
:{白}か{赤}を加える。)
あなたがすでにメサをコントロールしているなら、あなたはメサをプレイできない。

デュアルランド…!?
(…と思ったけど、よくよく考えたら白赤のデュアルランドはプラトーだから違う?)
何を驚いている?
《メサ》から{白}を生み出す。《赤と白の対抗魔力》をキャストして{白}{赤}をマナプールに加えるぞ。

赤と白の対抗魔力

混沌のインスタント {0}
(白と黒の対抗魔力は白であり、なおかつ赤である。)
あなたがコントロールしていてタップされている山1つにつき{白}を加える。
あなたがコントロールしていてタップされている平地1つにつき{赤}を加える。

(知らない土地と知らない呪文からいっぱいマナが出てきた…)
3マナで《太陽フレア》をキャスト。
11枚カードを引く。君も10枚カードを引けるぞ。

太陽フレア

混沌のエンチャント {1}{白}{赤}
太陽フレアが戦場に出たとき、あなたはカードを11枚引き、各対戦相手はカードを10枚引く。
全てのプレイヤーの手札の最大枚数は3増える。

(これ、本当にマジック:ザ・ギャザリングだよね…?)





企画説明

次のルールの下、『スペクトラルカオス』のカードを使用したデッキを構築します。
  • 『スペクトラルカオス』に収録予定だったカードを使用する
  • 実在するデュアルランドは採用しない
  • 『レジェンド』以降のカードは採用しない
  • その他の構築ルールはレガシー準拠

構築したデッキを元に、『スペクトラルカオス』が発売された世界線のMTGのゲーム性について考えるのが本記事の趣旨になります。

詳細は下に書き連ねていますが、細かい部分を気にしないのであれば読み飛ばしてしまって大丈夫です。


フォーマットはレガシー

『スペクトラルカオス』は『レジェンド』の前に発売される予定だったセットであるため、必然的に収録カードがリーガルとなるフォーマットはレガシーないしはヴィンテージに限られていた。

今回は、比較的一般に浸透しているフォーマットとしてレガシーに準拠することとした。

(もちろん、『スペクトラルカオス』がMTGというゲームに与える絶大な影響力が、以降のフォーマット整備にすら影響を与えた可能性は大いにあるのだが、そこまで検討していては果てがないため今回はその可能性を考慮しない。)


実在するデュアルランドは採用しない

調整版対抗色デュアルランドがデザインされた事実から鑑みるに、『スペクトラルカオス』が発売された世界線ではデュアルランドが(少なくとも対抗色のデュアルランドが)最終的にヴィンテージ以外のフォーマットで使用を禁止される運命をたどる可能性が高いと考えた。

また、『スペクトラルカオス』では多くの対抗色サポートのカードがデザインされており、中でも対抗魔力サイクルは対抗色デュアルランドと過剰なまでのシナジーを形成していた。

対抗色の扱いを難しくするための調整版対抗色デュアルランドが5枚目のデュアルランドとしてデッキに加わることで、かえって対抗色の扱いを容易にしているゲームデザイン的な不備も上の考えを補強する材料になる。


『レジェンド』以降のカードは採用しない

『スペクトラルカオス』はマジック:ザ・ギャザリングのゲーム性を永遠に変えてしまうような強烈なデザインになっている。カラーパイをはじめ、未だゲームの根幹が固まりきっていなかった当時のMTGがこの強烈な『スペクトラルカオス』を経験したならば、それ以降のMTGのゲームデザインは現在私たちが遊んでいるMTGとまるで異なるものになっていたことは想像に難くない。

わずか『モダンホライゾン2』の1セットでゲーム性が激変したモダンのことを思えば、『スペクトラルカオス』1セットでMTGそのものが大きく変わってしまった可能性は大いに考えられるだろう。『スペクトラルカオス』には429種類ものカードが収録される予定であったため、その影響力は一層大きかったはずだ。

ゆえに、現在の私たちの世界のMTGカードの多くは、『スペクトラルカオス』が発売された世界においてはゲームの健全性のために忌避されるべきデザインである可能性が高く(例えば高マナ域へのアクセスが容易な『スペクトラルカオス』世界で《引き裂かれし永劫、エムラクール》のようなカードは当然デザインされ得なかったと思われる)、現代のカードと『スペクトラルカオス』のカードのコラボレーションとを想定しても仕方がないと考えた。
(もちろんそのようなコンセプトも面白いと思うので、できれば今度取り扱いたい…)

あるいは単純に、『スペクトラルカオス』のカードパワーが異次元に高いので、以降実際に発売された無数のカードとコラボレーションをすれば出来ないことの方が少ないような無秩序に陥ってしまい、そもそも構築を模索する行為の意味が失せてしまうという問題もあった。

加えて、『スペクトラルカオス』が想定していたであろうカードプールで構築を楽しむことで、バリー・ライヒのゲームデザインの意図を浮き彫りにする効果も見込める。「MTGが歩み得たもう可能性について模索する」という趣旨からすれば、まずバリー・ライヒのプレイテストやデザインを追体験していく方が良いように思われた。

「極端に狭いカードプールなので、出来上がるデッキも弱いものになってしまうのではないか」と心配されるかもしれないが、その点は安心して欲しい。こちらの世界のMTGが30年弱の期間を経てもなお成しえなかったインフレを『スペクトラルカオス』は1セットでやってのけている。『モダンホライゾン2』もすさまじいセットだったが、これの10倍はパワフルなセットだと言っても過言ではないだろう。いや、10倍どころではあるまい。他のゲームで言えば、ポケモンEXであったり、ペンデュラム召喚であったり、あるいは侵略・革命チェンジであったり、とにかくこれまであったゲームを全く別の何かに作り替えるだけの力を秘めたセットだった。





並行世界のバーンデッキ「アンチマナバーン」

  • カード名をタップで詳細ページに飛びます。
  • 虹()マークがあるのは『スペクトラルカオス』への収録が予定されていたカードです。

メイン

クリーチャー

2 偉大なる猫族、アルマン
4 魔力の甲虫
4 藍色のエレメンタル

呪文

4 色あせたモックス
4 赤と白の対抗魔力
4 白と黒の対抗魔力
4 稲妻
4 剣を鍬に
4 火の玉
4 太陽フレア
2 均勢

土地

2 フェン
3 メサ
1 湿地
3 谷間
4 オークの運河
3 平地
2
2

サイドボード

2 偉大なる猫族、アルマン
4 狼男
4 炎の一撃
2 赤の減衰域
2 血染めの月
1 魔力反転



対抗魔力サイクルは、対応する基本土地タイプを持った土地1枚につき1マナを加えるインスタント。

例えば《赤と白の対抗魔力》は、平地か山タイプを持つタップされた土地1つにつき1マナを生み出します。その両方のタイプを持った土地があれば2マナ生み出せるので、《メサ》をセットしてすぐにタップ→《赤と白の対抗魔力》を詠唱の流れで1ターン目にあわせて3マナ生み出すことができます。

赤と白の対抗魔力

混沌のインスタント {0}
(白と黒の対抗魔力は白であり、なおかつ赤である。)
あなたがコントロールしていてタップされている山1つにつき{白}を加える。
あなたがコントロールしていてタップされている平地1つにつき{赤}を加える。

《谷間》はそれ以降土地をセットできなくなるデメリットと引き換えに2マナ生み出すことができる3色地形。自身の起動型能力で自壊も可能です。調整版モックスの《色あせたモックス》と組み合わせることで1ターン目に3マナを用意できます。

こうして素早く3マナを用意して《太陽フレア》で11枚ドローし、この潤沢な手札をマナに変換しながら大胆なアクションを起こしていきます。

太陽フレア

混沌のエンチャント {1}{白}{赤}
太陽フレアが戦場に出たとき、あなたはカードを11枚引き、各対戦相手はカードを10枚引く。
全てのプレイヤーの手札の最大枚数は3増える。


強烈なマナジャンプから《太陽フレア》を唱えるところからこのデッキは始まるのだ…!
まさかの11枚ドロー…私たちの世界じゃ絶対あり得ないスペックです!
そ、そうなのか…?
それでは手札が足りなくて困らないか??
そんなことはない…かな…?




…で、大量ドローしたら当然さっきの「対抗魔力」が手札にくるから、次の自分のターンにそれでマナを増やして《火の玉》に注ぎ込む。
これで決着がつくわけだな!

火の玉

ソーサリー {X}{赤}
この呪文を唱えるためのコストは、2つ目以降の対象1つにつき(1)多くなる。 クリーチャーやプレインズウォーカーやプレイヤーのうち望む数を対象とする。火の玉はそれらにそれぞれ、X点を端数を切り捨てて均等に割った点数のダメージを与える。

すさまじい…これが平行世界のマジックなんですね…!
もっとも、上手く火力が伸ばせないことも珍しくはない。
一撃で削り切れなかった場合は、《偉大なる猫族、アルマン》《稲妻》で残ったライフを削ったり、もう一回《太陽フレア》を唱えてさらに手札を集めたりして継戦するぞ。

偉大なる猫族、アルマン

クリーチャー - 猫・騎士 {白}
3/2

この《偉大なる猫族、アルマン》もすごいですね…
私たちの世界には、こんなに純粋にサイズの大きい1マナクリーチャーはいませんでした…
まぁ…こっちの世界でもコイツは相当イレギュラーな存在だからな。
未だに一番大きい1マナクリーチャーの地位を守っているし。
ところでこの《藍色のエレメンタル》はどうしてデッキに入れてるんですか?

藍色のエレメンタル

クリーチャー - エレメンタル {3}{黒}{黒}{赤}{赤}
8/4
プロテクション(黒)
プロテクション(赤)

え、どうしてって…そりゃあ最強だからに決まっているだろう。
除去の強い赤からも黒からも体制があって頑丈。クロックも8点。文句の付け所がないスーパークリーチャーだ。
え…もっと強いクリーチャーいないんですか??
勿論いるわけがな…いるのか!?
君たちの世界には…?
えっと、こんなのとか…??
色々いますよ?

残虐の執政官

クリーチャー - 執政官 {6}{黒}{黒}
6/6
飛行
残虐の執政官が戦場に出るか攻撃するたび、対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーはクリーチャー1体かプレインズウォーカー1体を生け贄に捧げ、カード1枚を捨て、3点のライフを失う。あなたはカード1枚を引き3点のライフを得る。

な、な…なんだこれは…
というかテキスト多いな!?!?
こんなのはありえない、滅茶苦茶だ…!


パラレルワールドMTG予想①
並行世界では大型クリーチャーの性能が伸び悩んだ?
『スペクトラルカオス』には「対抗魔力」サイクルをはじめ、《オークの運河》など高マナ域に序盤からアクセスする手段が豊富に存在していた。 ゆえに『スペクトラルカオス』が発売された世界では、マナ総量の多寡による制約が十分に機能せず、マナ総量と性能の相関関係が弱くなってしまうのではないかと考えた。

そうなると召喚コストが重いからと言って大型クリーチャーが高性能化することもなく、この《藍色のエレメンタル》程度のクリーチャーが長い期間にわたってリリースされ続け、クリーチャーの質のインフレがほとんど起こらないか、かえってデフレし続けるような現象が起こり得るだろう。

丁度、私たちの世界においてクリーチャーの質が向上し続けた反面、呪文の質が劣化し続けた時期があったが、それの逆の現象が膨大なマナソースによって引き起こされるのだと考えると納得感があるのではないだろうか。

あるいは、仮にクリーチャーの質がインフレーションしたとして、少なくとも《残虐の執政官》《グリセルブランド》のように高いマナコストの見返りとしてカード・アドバンテージを与えるようなデザインはなされなかったはずだ。

というのは、『スペクトラルカオス』のある世界においてはリソースを消費しての高マナ域へのアクセスが容易であり、そうして召喚されるクリーチャーが消費したリソースを回収してしまってはゲームデザイン上大いに不都合となりうる。インスタント、ソーサリーのような単発型の呪文がリソースを稼ぎ、稼いだリソースから召喚されたクリーチャーがゲームを終わらせるという分担を意識したデザインを徹底せねば各カード・タイプの意義が損なわれかねず、並行世界のWotCはその指針を守るであろうことが窺えるためである。



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採用カード紹介「赤白黒バーン」

均勢

混沌のエンチャント {3}{白}{赤}
各プレイヤーのドロー・ステップの開始時、そのプレイヤーは手札の枚数が手札の上限枚数と等しくなるまでカードを引く。こうして手札が10枚よりも多くなるなら、10枚になるまで引く。(その後、通常のドロー・ステップによるドローを行う。)

5枚目の以降の《太陽フレア》として採用したカード。

これは《太陽フレア》に関しても言えることですが、大量ドローの恩恵を先に受けるのは対戦相手であるため、同型マッチやコンボ対面で無警戒に使用すると相手に利用されてしまって負けることもあり得ます。

莫大なリソースを得られるカードですが、先に相手が利益を享受しやすいデザインにすることでゲームバランスを取っているのでしょう。大味なようで絶妙なデザインとなっている1枚です。


これによって対戦相手が大量の「対抗魔力」を引いてしまって、そこから返しのターンでコンボを決められて即死…なんてこともあるから対戦相手のデッキには注意が必要なんだ。
なるほど…あえて使わない選択も大事と…
そうなるな。リソース回復だから無茶を承知でも使いたくなってしまうんだが、そこを我慢できるのが玄人というわけさ。
《太陽フレア》についてもすぐに唱えずに取っておいて、たっぷり土地を並べてから唱えるというプレイングがあるわけですね。
するどいな…!その通りだぞ。
だから同型マッチやコンボ対面は睨みあいになることが多いのだ…
なるほど、それで《藍色のエレメンタル》が必要になるわけですね。
睨みあったまま拮抗したゲームを打開できるカードだからな。



色あせたモックス

アーティファクト {0}
:{1}を加える。

調整版のモックス。無色マナしか出ない調整は絶妙で、単体で見れば見た目以上に堅実なデザインとなっているカードです。

問題となるのは《太陽フレア》などの大量ドロー呪文との相性の良さ。1枚分のカード・アドバンテージと無色マナ1点との釣り合いが絶妙なカードだったのに、大量ドローによってカード・アドバンテージを失う重みが消えてしまえば、このカードにはマナ加速のメリットしか残りません。


これは「対抗魔力」サイクルに対しても言えることだな…


《太陽フレア》で大量ドローするとほぼ確実に手札が上限枚数を越えてしまい、ディスカードステップに2~3枚の手札を捨てることになってしまいます。しかし、もし《太陽フレア》から《色あせたモックス》を引き込むことができたら、すぐに《色あせたモックス》を0マナで唱えて、その枚数分ディスカードステップに捨てられる運命にあった手札を救うことができます。この場合、《色あせたモックス》は実質的に手札を1枚も減らすことなくマナを伸ばせていることになりますね。

これは、とりあえず唱えておける《色あせたモックス》ならではのメリットで、同じく0マナのマナソースである「対抗魔力」にはない強みでもあります。

原則として使用できるカードの枚数はマナの数によって限定されているため、《太陽フレア》によって大量の手札が得られたとしても、手札でダブつくカードというのが数枚出てきてしまいます。デッキに《色あせたモックス》を採用しておけば、それ自体が0マナだからすぐ使えるのと、供出するマナで使用できる呪文が増えるかもしれない二つから、手札をダブつかせるリスクを軽減できます。

以上のことから《太陽フレア》採用デッキにおける《色あせたモックス》はほとんど「入れ得」なカードになっています。


0マナだから《太陽フレア》で引いてすぐに出せる。こうやって出した枚数分ディスカードフェイズ(現クリンナップ・ステップ)で捨てる手札が減る…というのは当たり前の話なのだが、使ってみるとこれが中々にありがたくてな。
手札のロスが減って洗練された動きができるようになる…というワケですね!



魔力の甲虫

クリーチャー - 昆虫 {1}{赤}
2/2
あなたの墓地から魔力の甲虫を追放する:{黒}{黒}{赤}を加える。

墓地から追放することで3マナを得ることができる昆虫・クリーチャー。

《太陽フレア》で手札を溢れさせ、ディスカードフェイズ(現クリンナップ・ステップ)で捨てるというのが専らの使い方になります。強烈なマナ能力ですが、《マナ吸収》同様にマナ・バーンを前提にデザインされていたのでしょう。

手札上限を超過して捨てられる運命にあったカードを有効活用できるという点においては、上記の《色あせたモックス》に似た役割を担うカードと見ることもできます。

《色あせたモックス》は初速に貢献できるのに対して、《魔力の甲虫》はクロックになれるというのが差別化点。もちろん、コンボ指向のデッキであれば本リストのように両方採用することも珍しくはなかったでしょう。
ちなみに『スペクトラルカオス』とそれ以前のカードプールでは、2マナ2/2というだけで上澄みのスペックだったりします。クリーチャーの性能には慎重にならざるを得なかったであろうスペクトラルカオス世界では、本体サイズの優秀さも相まって長年にわたって優秀なクリーチャーであり続けたのではないか…などと想像が膨らみます。

(あるいはこのカードが基準となって、小型クリーチャーの高性能化に拍車がかかった可能性も十分に考えられますが…)


「破壊されたらマナが出るクリーチャー」というデザインだったのだろうが、手札を溢れさせて捨てる使い方が定着してしまってな…
まぁ…そうですよね。
デッキビルダーなら額面通りには使いたくないカードだと思います。



谷間

混沌の土地
あなたは土地をプレイできない。
:{白/緑/赤}{白/緑/赤}を加える。
:谷間を生贄に捧げる。

とんでもなく強力な土地。一見すると「あなたは土地をプレイできない。」による土地が伸ばせなくなるデメリットが厳しいように思えますが、実際はそうでもありませんでした。

そもそも自身が2マナ土地なので、これ以降にセットするはずだった土地の分のマナが伸ばせていますし、3色のマナを生み出す能力のおかげでマナ色にも難儀しません。《色あせたモックス》があれば一応マナを伸ばすことができるのもあって、見た目ほど厳しいデメリットでもありませんでした。

ただし1ターン目に《谷間》をプレイするのは諸々の不都合があるため、基本土地やデュアルランドに対して純粋に優位なカードというわけでもありません。

1ターン目にプレイした《谷間》の特に不味いのはインスタントタイミングの駆け引きに脆くなってしまうところです。どんなアクションを起こしてもタップアウト状態になってしまうので、駆け引きどころではなくなってしまいます。加えて《谷間》は基本土地タイプを持たないので「対抗魔力」からマナを得ることができなくなってしまうのも苦しいところ。

1ターン目には基本土地かデュアルランドを置いておき、2ターン目に以降に《谷間》をプレイするのが定石になるのではないかと思います。


例外的に、1ターン目に《色あせたモックス》と《谷間》をプレイして《太陽フレア》を唱えるプレイングはアリだと思う。対面次第ではあるがな。


パラレルワールドMTG予想②
大量ドローを巡るメタゲーム
先述の通り《太陽フレア》や《均勢》には、唱えたプレイヤーではなく対戦相手の方が先にドローの恩恵を享受しやすいという欠点がある。

であるならば当然、大量ドローと対抗魔力とを採用したデッキどうしでは読みあいが生じる。先に対戦相手に大量ドローを撃たせたい、けれど待ちすぎると十分なマナを貯められて大量ドローからすぐにコンボを決められてしまう…このようなチキンレースの盤面が往々にして見られるものになりそうだ。

こうした読みあいの行きつく先には何があるだろうか。私は、構築単位で相手の大量ドローを利用しようとするプレイヤーが現れるのではないかと考えた。

例えば相手の大量ドローを見込んで、通常のウィニーデッキであるにも関わらず数枚の「対抗魔力」をメインに採用したデッキなどが現れるかもしれない。相手の大量ドローを利用して大量展開できるのが理想だが、相手が警戒して大量ドローを使ってこなければその隙に数体のウィニーで殴り切れば良い。

「アンチマナバーン」のサイドボードに、《狼男》や《偉大なる猫族、アルマン》など優秀な小型クリーチャーを採用してあるのは、上記のような相手の大量ドロー呪文を利用してのゲームメイクを期してのものである。

こうして対戦相手の大量ドローを見込んだデッキが増えれば、大量ドロー採用のデッキは凋落する。そうなれば大量ドローを利用するデッキも後を追うことになり、そうなると今度は大量ドローを採用したデッキが活躍しやすくなる。そうやって並行世界のMTGのメタゲームは流転していくのではないか。前述を踏まえて、大量ドローがメタゲームのひとつの軸となるのではないかと予想する。



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このカード面白いですね!
良いデッキが組めそうです…!

命の噴出

混沌のソーサリー {緑}{緑}{緑}{緑}{青}{青}{青}{青}
すべてのプレイヤーは100点のライフを得る!

《命の噴出》か…
まぁ、面白いカードだがネタカードの域を出ないな。
…!
ふふ、本当にそうでしょうか?
いや、そうだろう。流石に自分も相手もライフを回復してしまってはゲームが冗長になるだけではないか。
このカードでデッキを組んでみてもいいですか?
何か秘策があるのか…?
私のコレクションを使ってくれてもかまわない、それで事足りるかはわからないが。
ありがとうございます!!
すごいデッキを組んでみせますよ…!





平行世界のコントロール「ガイザーバベル」

  • カード名をタップで詳細ページに飛びます。
  • 虹()マークがあるのは『スペクトラルカオス』への収録が予定されていたカードです。

メイン(80枚)

クリーチャー

4 極楽鳥
2 カミツキガメ
2 大気の精霊

呪文

4 色あせたモックス
4 緑と青の対抗魔力
3 剣を鍬に
4 魔力消沈
4 繁茂
4 精神的敏捷性
4 太陽フレア
1 質素
4 大洪水
2 均勢
1 再帰
4 時間の環
4 命の噴出

土地

3 メサ
4
4 珊瑚礁
4 オークの運河
3 谷間
2 平地
3
1
5

サイドボード

4 赤の減衰域
3 アーナム・ジン
1 グレムリン
2 青色のエレメンタル
1 神の怒り
2 ハリケーン
2 垂れ下がる蔦



《命の噴出》はすべてのプレイヤーが100点ライフゲインするインパクト抜群なソーサリー。ひとたび唱えてしまえば、ビートダウンやバーンデッキが勝利することは非常に困難になります。

勝てなくなるのは自分も同じことなので、何の工夫もせずに使ってしまうとゲームが冗長になってしまうだけ。できることは遅延だけであり、一見すると使いどころに困るカードになっています。

今回は山札を80枚(一般的なデッキよりも20枚多い)にして、ひたすらに遅延しているだけで相手のライブラリアウトによって勝利できるコントロールを構築してみました。


とにかく遅延が得意であるという《命の噴出》の特徴を活かして、ライブラリアウトをじっくり待つコントロールデッキを組んでみました…! 車輪の再発明かもですけど。
…!?!?
な、なるほど。その手があったか…!?
あれ、こっちの世界でも珍しいデッキなのでしょうか?
ああ。「デッキは60枚で組むもの」という固定観念に毒されていたのかもしれない…
しかし100点もライフが回復できると言えど、相手の山札が無くなるまでで耐えきれるのか?
もっと言えば、耐えられたとして冗長すぎるようにも思うが…
《太陽フレア》《精神的敏捷性》みたいなお互いドローするカードでガンガン削っていけるので、見た目以上に早くゲームが終わるハズです!
大量ドロー呪文を使えば、《緑と青の対抗魔力》や《オークの運河》みたいなマナソースを集めつつ、相手のライブラリを削ることもできるわけか…
これは中々に練られているな…面白い!



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採用カード紹介「ガイザーバベル」

大洪水

ソーサリー {2}{青}{青}{青}
島渡り、島住まい(Islandhome)、飛行のいずれも持たないクリーチャーすべてを破壊する。
ターン終了時まで、マナを引き出す目的で土地がタップされるとき、それが本来生み出すマナ1点につき、代わりに{青}を生み出す。

青い《神の怒り》
島渡り、島住まい、飛行のクリーチャーが破壊を免れる点が本家との大きな相違点です。

※島住まい(Islandhome)は『スペクトラルカオス』独自のデメリット能力で、対戦相手が島をコントロールしていなければ攻撃できない。

これを活かして、相手のクリーチャーだけを破壊しながら相手のライフを削り切るゲームメイクもできるように《大気の精霊》を2枚採用しています。

《命の噴出》と《時間の環》を駆使した遅延が勝ち筋となる本リストですが、ライブラリが80枚もあるために安定感に欠き、思ったようにゲームメイクできないリスクもあります。

時間の環

混沌のソーサリー {2}{緑}{白}{青}{青}{青}
すべてのパーマネントをオーナーの手札に戻す。
すべてのマナ・プールを空にする。

うまく《命の噴出》にこぎつけることができなかった場合にも勝てるよう、《大洪水》で盤面を荒らしながら《大気の精霊》で殴り切るというサブプランも用意しておきました。


《大気の精霊》は《セラの天使》の方が良いのではないか?
あっちの方が明らかに高性能だが…
あ…それなのですが、早期召喚しやすいので《大気の精霊》の方を優先しちゃいました。
あぁ…なるほど。《緑と青の対抗魔力》《オークの運河》からの青マナで出すことも出来るからな。



再帰(Spectral Chaos)

混沌のインスタント {1}{赤}{白}{青}{青}
呪文1つを対象とする。それを打ち消す。その呪文がこれにより打ち消されたなら、それと再帰をそれぞれのオーナーの墓地に置く代わりに、それぞれのオーナーの手札に加える。

十分な量のマナがあれば、たった1枚で対戦相手を完封してしまえる打ち消し呪文。

マナコストが5点と重いため、コストの軽い呪文を繰り返し唱えられると通すほかなくなってしまう。ゆえに軽い呪文は実質的に打ち消せない。くり返し使えるがゆえに複数枚手札にあってもダブついて機能しないなど、見た目以上に扱いにくいカードなので1枚だけの採用にしました。

同名の別カードが実在しています。


パッと見た感じは欠陥デザインなのに、実はよく練られたカードなんですよね。
そうだな。対抗魔力で生み出したマナを《火の玉》に注ぎ込む戦略には有効打となるのも面白いところだと思う。
《火の玉》は手札に帰ってきても、対抗魔力は帰ってきませんからね…!


パラレルワールドMTG予想③
並行世界の再録禁止カードは少ない?
ここまで記事をご覧くださった皆さんはもうご存知であると思うが、『スペクトラルカオス』には非常に多くのパワーカードが封入されており、多色化の支えとなるカードも多かった。

もし『スペクトラルカオス』が実際に発売されたとしても、依然としてデュアルランドは有用なカードであり続けるだろう。しかし同時に、私たちの世界でのデュアルランドほど重要視されなくなった可能性も考えられる。『スペクトラルカオス』に封入される予定だった調整版デュアルランドよりも、リミテッド・エディションに封入されたデュアルランドの方がずっと優秀であることには変わりないが、しかし代用に耐えうる性能であることも確かだ。加えてデュアルランドへの需要が《谷間》《湿地》のような3色地形や《オークの運河》のような優秀な特殊地形に分散された可能性も十二分にあり得る。

《色あせたモックス》《モックス・サファイア》に及ぶべくもないが、「対抗魔力」には《ブラック・ロータス》に肉薄するものがあった。

つまるところ、パワー9やデュアルランドと同等程度の強力なカードが『スペクトラルカオス』に収録される予定だった。クリーチャーの質に関しては明白に『スペクトラルカオス』が優れていた。

上記のことから考えるに、『スペクトラルカオス』はMTGがはじめて体験する「インフレ」になり得たと考えられる。そしてそれは、あの「再録禁止」騒動の引き金となった『クロニクル』よりも早く訪れる予定だった。再録とは違った形でショップの資産が脅かされることになったことは想像に難くない。

しかし、仮にそうなったとして、ショップは「再録」に対してしたように「インフレ」に対しても反発しただろうか。新しいセットから強力なカードが出てくるのは当然ゲームを刺激的にするためだろうが、それに対してショップが反発するというのはいささか無理がある。「ゲームを面白くするためかもしれないが、ウチの資産が打撃を受けるかもしれないので強いカードを作るのをやめて欲しい」という主張は、ゲームの面白さに裏打ちされたビジネスを行うショップの主張としては破綻してしまっている。ゆえに、そんな主張を掲げるショップはほとんど現れなかったのではないか。

そうなれば、現在私たちのTCGの世界において存在する普遍的な認識が…TCGはある程度インフレするものであり、新しいカードからはもっと強いカードが現れるものである…という暗黙的な約束がメーカーとプレイヤー・ショップとの間で早期に交わされることになっただろう。

その上で『クロニクル』が発売されたとして、ショップやプレイヤーは再録に難色を示しただろうか。それでもやはり難色を示したかもしれないが、その抵抗は私たちの世界で起こったよりも小規模だったのではないかと私は思う。当時の再録への抵抗は、カードに付いたプレミアによるものだったが、そのプレミアを裏打ちしていたのはMTGの歴史ではなく各々のカードの強さだ。性能的に似ているか、あるいはもっと優れているカードが新しいセットから入手できる見込みがあるのなら、再録に抵抗する意義は小さくなるはずだ。

以上からスペクトラルカオス世界においては「再録禁止」カードが指定されないか、あるいは指定されたとしても私たちの世界よりも少数にとどまると予想する。



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「ガイザーバベル」…と言ったか?たしかに面白いデッキなのだが、流石に80枚の構築となると安定しないものだな…
ですね。60枚デッキの勘が通用しないのを感じます…
マリガン判断にも確率的に影響するのだろうか。興味深いな。





うーん…今日は楽しかった!
けど、これからどうしよう。
普通に楽しそうにしてたから忘れていたが、君は遭難中の身だったな…
えぇ…遭難なんてそんな大げさな…
ただの迷子ですよぉ…!
えぇ…異世界の自分に会ったのに?
尋常な状況じゃないぞ、私だったら途方に暮れるな。
とりあえず宿をどうにかしないとですね。
それなら心配はいらない。当分は私のところに身を寄せればいい、同じ顔の…同じ…レイシルのよしみでな。
わぁ…ありがとうございます!!
それじゃあまた明日。おやすみなさい…!
おい、私のベッドで寝るなよ。というかシャワーは浴びてくれよ。君の寝床は別に用意し…
…。
…?
…。ぐう。
…なんてマイペースな…





並行世界の痕跡をたどる

『スペクトラルカオス』というエキスパンション自体は凍結されたままになってしまいましたが、その全てが無駄になったわけではありません。その奇抜で創造的なカードデザインのアイデアは後のセットに流用されて生きています。

バリー・ライヒさまによる初期MTGへの貢献へ敬意を表し、『スペクトラルカオス』からデザインの流用されたと思しきカードを数枚紹介いたします。
(本記事のリストに使用したものから抜粋いたします)

本記事をご覧くださり、『スペクトラルカオス』に関心を抱かれた方、いっしょに『スペクトラルカオス』の発売された「もしも」の世界に思いを馳せられた方は、是非これらのカードをショップで探してみてください。

ほんの数枚ではありますが、MTGのパラレルワールドの痕跡をデッキに取り入れて楽しむ…というのも面白いかもしれません。



世界粛清(シャドウムーア)

ソーサリー {4}{白/青}{白/青}{白/青}{白/青}
すべてのパーマネントをオーナーの手札に戻す。 各プレイヤーは自分の手札にあるカードを最大7枚まで選び、その後残りを自分のライブラリーに加えて切り直す。 すべてのマナ・プールを空にする。

『スペクトラルカオス』の《時間の環》からデザインが流用されたカードです。《時間の環》とちがうのは手札からあふれたカードが山札に戻るという点。

本記事の「ガイザーバベル」のように延々遅延してライブラリアウトさせる戦法とは相性が悪くなってしまっていますが、WotCはあえてそうなるようにデザインしたのかもしれません。流石に延々と遅延してライブラリアウトを待つようなのは冗長すぎて不健全であると判断されても仕方ないでしょうからね…



謙虚(テンペスト)

エンチャント {2}{白}{白}
すべてのクリーチャーはすべての能力を失うとともに、基本のパワーとタフネスが1/1である。

《質素》からデザインが流用されたカード。アーティファクト化する、変更先のサイズは2/2なので1/1にとってはサイズアップになるなど悪用できる要素が削ぎ落されたデザインになっています。

《世界粛清》と本カードは明白にデザインが流用されたカードであり、『スペクトラルカオス』がデザインの流用という形で後代のMTGに影響を与えたことを示す証左となっています。



光素のスカラベ(ニューカペナの街角)

アーティファクト・クリーチャー - 昆虫 {2}
2/1
{2}, あなたの墓地にある光素のスカラベを追放する:宝物・トークン1つを生成する。(それは、「 , このアーティファクトを生け贄に捧げる:好きな色1色のマナ1点を加える。」を持つアーティファクトである。)

「墓地から」「マナを供出する」「2マナの」「昆虫」ということで、《魔力の甲虫》と非常に共通項の多いクリーチャーです。上のカードと違ってデザインがほとんどそのまま…というわけではないので、偶然似通ったカードになった可能性もあります。



クルフィックスの指図(ニクスへの旅)

エンチャント {1}{青}{青}
瞬速
各プレイヤーのドロー・ステップの開始時に、そのプレイヤーはカードを追加で1枚引く。

「すべてプレイヤーに追加ドローをさせる」「対戦相手が先に追加ドローの恩恵をあずかれないように対策してある」という二つから《精神的敏捷性》を思わせるカードです。

ただし、追加ドローさせる青のエンチャントというデザインはカラーパイ的にもゲームデザイン的にも自然なものですし、対戦相手が先にドローの恩恵を受けないようにしたいという意図もテストプレイから自然と生じ得るものでしょうから、収斂進化的に類似したカードがデザインされた可能性も否めません。



ほくちの加工場(インベイジョン)

土地
ほくちの加工場はタップ状態で戦場に出る。
:{緑}を加える。
,ほくちの加工場を生け贄に捧げる:{赤}{白}を加える。

『インベイジョン』サクリファイスランドは、『スペクトラルカオス』の《谷間》及び《湿地》を思わせるデザインになっているサイクルです。

『フォールン・エンパイア』のサクリファイスランドの系譜も継ぐカードなので、こちらの変種としてデザインされたと考えることもできます。 あるいは実際にそうかもしれませんが、『インベイジョン』のサクリファイスランドは《谷間》《湿地》の調整版であると私は信じています。というのも、そう信じるに値する資料があるからです。

それは"WHATEVER HAPPENED TO BARRY'S LAND?"というマーク・ローズウォーターによるコラム。本コラム内でマローは、ビル・ロースが『スペクトラルカオス』からアイデアを流用しながら『インベイジョン』をデザインしたことを明らかにしています。

友好色3色のマナが出せて、2マナ土地で、自壊する。『スペクトラルカオス』からデザインが流用されていることが明らかである以上、これは偶然の符合とは思えません。『フォールン・エンパイア』のサクリファイスランドを雛型に、《谷間》《湿地》の調整版をデザインしたと見るのが妥当なのではないでしょうか。



さいごに

この記事を公開するにあたって 黎明期のマジック開発を支えたバリー・ライヒさま、そしてMTGの歴史に埋もれていた没セット『スペクトラルカオス』を掘り起こし、楽しいプロジェクトとして再編したRagingRiverMTGさまに、感謝と敬意を表します。




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プロフィール

らすとさば
TCGプレイヤーです。主にMTGを安くカジュアルに楽しむ記事を書いています!