統率者としての《機械の母、エリシュ・ノーン》を考察する。シェルドン・メネリーはなぜ新たなノーンに「否」を突き付けるのか?
こんな内容の記事です
- シェルドン・メネリーが《機械の母、エリシュ・ノーン》のカード・デザインを非難する記事"Elesh Norn, Mother Of Machines: The Good And The Bad"についてのまとめと、考えたことを記事にしています。
- 前半は元記事の内容まとめたものになっています。
- 記事でのシェルドンの主張に対して、後半で私見を述べさせていただいています。
- 比較的長い記事になっておりますので、本ページをブックマークするなどして休みながらご覧いただければと思います。
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機械の母、エリシュ・ノーンはこんなカード
機械の母、エリシュ・ノーン
マナ・コスト | {4}{白} |
---|---|
タイプ | 伝説のクリーチャー — ファイレクシアン・法務官 |
P/T | 4/7 |
テキスト
警戒
パーマネント1つが戦場に出たことによりあなたがコントロールしているパーマネントの誘発型能力1つが誘発するなら、その能力は追加でもう1回誘発する。
パーマネントが戦場に出ることによっては、対戦相手がコントロールしているパーマネントの能力は誘発しない。
つよそう。
タフネス7で《邪悪な熱気》に耐えられるようになってるの、理不尽すぎないか…?
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元記事「機械の母、エリシュ・ノーンの長短(試訳)」の概要
元記事はこちらから
以下はシェルドン・メネリーによる記事「機械の母、エリシュ・ノーンの長短(試訳:原題は"Elesh Norn, Mother Of Machines: The Good And The Bad")」の概要となります。
序論
この白い法務官(機械の母、エリシュ・ノーン)には言いたことがたくさんある。
私(シェルドン・メネリー)の意見に対して、多くの反対意見が出てくることもある程度想像してある。
しかし、読者のみなさんの理解が得られるよう、最善を尽くした議論を展開するつもりだ。もちろん、私の意見に全面的に同意いただけなくてもかまわない。一部分でもご理解いただけたり、価値のある主張だと思っていただければ幸いだ。
物議を醸したシェルドンの意見ですが、その是非を語る前に、彼の「最善を尽くした議論」に耳を傾けるのが「筋」じゃないかと思います。
まぁ…そりゃあそうだ。
…で、シェルドンは何を言って問題になってるんだ?
…で、シェルドンは何を言って問題になってるんだ?
「《機械の母、エリシュ・ノーン》のデザインは統率者を滅茶苦茶にするから、このテキストで刷ってほしくなかった」と…
あー、うん…なんだろう。
統率者が一番好きなんだなって…
統率者が一番好きなんだなって…
まぁ、実はその一言に尽きるような議論なのですが、それで終っては仕方ないので彼の展開する持論を見ていきましょうか…
全てカードには、良いところと悪いところとがある。全く素晴らしいカードというのはなくて、その良し悪しの混ざり合うところにしかカードは存在できないのだ。
カードの評価が全て相対的なものである以上、絶対的に完璧なカードというものは生じ得ない…ということでしょうね。
殊に統率者において、カードには性能面意外にも価値を有している。
カードには社会的な価値もある。
(おそらくだが、この社会的な価値の方が性能的な価値よりも大きいのではないだろうかと思う)
カードには社会的な価値もある。
この辺はコアな統率者のプレイヤーでなければ同意しかねるところかもですね…
だからこそ、この「社会的価値」ってヤツは常識扱いせずに議論のために掘り下げておくべきだったと思うぞ?
良いところ ― フレイバー
二つ名である「機械の母」というのが良い。
私が好きなバンドであるRushの"The Body Electric"のレリックを連想させてくれる。
レリックの中に「全て機械の母」というフレーズがあって、これがすごく印象的なんだ。このカードと本当によくマッチしていていい。
(このカードを見るたびに"The Body Electric"がイヤーワームしちゃうっていう問題が生じるかもだけどね)
レリックの中に「全て機械の母」というフレーズがあって、これがすごく印象的なんだ。このカードと本当によくマッチしていていい。
突然の 自分語り どうした?
このカードのアートは別格に素晴らしい。
メイン・プリントは構図に優れていて、エリシュ・ノーンの赤色が際立っている。命を与える血を連想させる赤色だ。
メイン・プリントは構図に優れていて、エリシュ・ノーンの赤色が際立っている。命を与える血を連想させる赤色だ。
「血を連想させる赤色」というのは的確な表現だな。
グレーアウトされた画面のなかで、流血するような赤色からノーン頭上の青へと、色彩が鑑賞者の視線を導いていてテクニカルです。
視線誘導によってノーンの崇高さを演出してるワケか…見事だな。
左右均等の構図も権威的でいいですよね。
別バージョンのアートはファイレクシアの不快で恐ろしい側面をフィーチャーしている。
全ての刃と棘が、そしてアングルが、「ファイレクシア人である」ということの意味を表すような不穏な画面になっている。
全ての刃と棘が、そしてアングルが、「ファイレクシア人である」ということの意味を表すような不穏な画面になっている。
2000文字
良いところ ― 性能
性能的には単純に強力。端的に言えばこちらの登場時能力を2倍にし、相手の登場時能力を拒絶するのだからね。
《オルゾフの聖堂》のようなバウンスランドの登場時能力(自身の土地を1枚バウンスする)も二度誘発するので、それが相手の助けになるかもしれない。だけど、ほとんどの場合こっちが圧倒的に有利な状況にあるのだから、それによって対戦相手が有利になることはないだろうね。
そもそもこのカードは{4}{白}という非常に軽いコストで出せる警戒4/7なんだ。(それだけで優秀な統率者だし、その上にこんな能力が乗っているのは強すぎるだろう)
《パンハモニコン》が4マナだから、単純計算で「《倦怠の宝珠》を内蔵した伝説の警戒4/7クリーチャー」に相当するのは{W}ということになりますね…
あー、まぁ…なるほど。
異常なコストパフォーマンスであることはたしかだ。
異常なコストパフォーマンスであることはたしかだ。
ビートダウンデッキが使う《倦怠の宝珠》と《パンハモニコン》とがセットになったこのカードは、勝つためにはすごくいい仕事をするだろう。
このエリシュ・ノーンは、スタックス系の統率者デッキの新たな1ピースになることが運命づけられている。
仮に「登場時能力の倍増」「登場時能力の封殺」の片方しか活かさないデッキを組むとしても、残りの99枚でそのもう片方の要素から少しも恩恵を受けないデッキなんて想像ができない。
スタックス
コスト増加カードによって相手の行動をロックするカードの俗称のひとつ。本来は《Mishra's Workshop》をマナ基盤に《からみつく鉄線》や《煙突》を展開して相手の行動を阻害するヴィンテージのロックデッキを指す通称だったが、現在では「デス&タックス」のようなEDHロックデッキを指す言葉として用いられているようだ。
まぁ、雑に「登場時能力の倍増」を活かすデッキを組むとして、対戦相手が「登場時能力の封殺」で苦しまないワケないからな…
逆にスタックス系のデッキを組むとしても、登場時能力のあるパーマネントを1枚も入れないなんてことはあるはずもなく…
非常に汎用性が高いカードなので、《機械の母、エリシュ・ノーン》の入ったありとあらゆる構築を模索できそうだ。
《機械の母、エリシュ・ノーン》は統率者にしても良いだろうし、「秘密の統率者」として使っても普通に99枚の一枚として使っても活躍するはずだ。
私の「Halloween with Karador」デッキを見ただけでも、ノーンの恩恵を受けるカードが14枚見つかった。実際に《機械の母、エリシュ・ノーン》を入れてみたら非常に堅牢なリストになるだろうね。
秘密の統率者(Secret Commander)
デッキテーマになるほど重要なパーツだが、デッキカラーのためにあえて別の伝説のクリーチャーを統率者にする構築テクニック。あるいはそのテクニックによってデッキに採用された重要なパーツのこと。Redditなどでこの慣用的なフレーズが用いられているのを確認できる。
余談だが、《機械の母、エリシュ・ノーン》は「変容」クリーチャーとはシナジーしないことを付け加えておく。
「変容」に成功したクリーチャーは、そのまま対象のクリーチャーと合体し、戦場に出た扱いにならないからだ。(「変容」に失敗したクリーチャーは通常のクリーチャー・呪文として解決されて戦場に出る)
もっとも、だからといって《機械の母、エリシュ・ノーン》の強さにケチがつくことなんてないのだが。
死の頂点、ネスロイ
伝説のクリーチャー - 猫・ナイトメア・ビースト {2}{白}{黒}{緑} 5/5 変容{4}{緑/白}{黒}{黒}(あなたがこの呪文をこれの変容コストで唱えるなら、あなたがオーナーであり人間でないクリーチャー1体を対象とし、これをそれの上か下に置く。これらは、一番上のクリーチャーに、その下にある能力すべてを加えたものに変容する。) 接死、絆魂 このクリーチャーが変容するたび、あなたの墓地から望む数のクリーチャー・カードをパワーの合計が10以下になるように対象とし、それらを戦場に戻す。 |
4000文字
良いところ ― 柔軟性
「パーマネント」の「登場時能力」に反応するカードであるため、エンチャントデッキなどでも使用することができる。
《豊かな成長》のキャントリップはもちろんのこと、《ナイレアの巨人》《開花の幻霊》など他のエンチャントが着地することによる誘発型能力も二度誘発するのだから、しっかりと組まれたエンチャントレスデッキは大きな恩恵を受けるだろう。
当たり前だけど、プレイヤーたちは「上陸」デッキと《機械の母、エリシュ・ノーン》のコンビネーションにも期待している。
《クルフィックスの狩猟者》や《水底のドルイド、タトヨヴァ》《ゼンディカーの報復者》と組み合わされることを想像してみてくれ。
この辺の上陸カードは《機械の母、エリシュ・ノーン》のリリース後、すぐに地元のショップのテーブルでよく見ることになると思うよ。
《機械の母、エリシュ・ノーン》は「上陸」デッキの統率者になれないので、あくまで1パーツとしての採用になるだろうね。強力だとは思うが、再現性に欠けるので問題になるほどの強さにはならないのではないだろうかとも思う。
《下僕の反射鏡》や《鏡操り》のような登場時誘発のコピー機もある。コピーするのに{2}の支払いが必要だが、クリーチャーやアーティファクトをコピーするのに{2}なんて「はした金」も同然だ。
もしコピーするのにマナコストを支払うのが嫌なら《消失師、プレストン》を使う手もある。
エンチャント、上陸、コピー機…よくそんなに活用方法を思いつくな…
統率者専門家の面目躍如って感じですね!
《鏡操り》が使えるのは盲点でした。
《鏡操り》が使えるのは盲点でした。
コピーが倍増できるのは悪用なんてもんじゃない…
俄然このカードが強く思えてきた。
俄然このカードが強く思えてきた。
良いところ ― 脅威の無効化
このカードのもうひとつの特徴…「登場時誘発の無効化」に注目すれば、《タッサの信託者》と《波止場の恐喝者》という統率者戦の二大脅威を無効化してくれるカードとして活躍するかもしれない。
とは言ってみたものの、《波止場の恐喝者》を無力化するというのは机上の空論かもしれないな。《機械の母、エリシュ・ノーン》を唱えるころには、みんなの大好きな《波止場の恐喝者》はすでにその仕事を終えてしまっているだろうからね。
…え?
じゃあなんで《波止場の恐喝者》を引き合いに出してきたんだ…?
じゃあなんで《波止場の恐喝者》を引き合いに出してきたんだ…?
使えるかなって思いながら記事を執筆してたけど、文字をタイプしてる途中でやっぱ無理だなって気づいた…とかでしょうか?
そんなライブ感のある執筆あるか…?
あります。…ちょっとだけ、たまに…よく…ある…かな?
…。
…。
まぁ…うちは勢いで書いてボツにした記事がストレージで山積みになってるからな…
勢いで作ったデッキリストとか、大抵検証中にボツになってるし。
勢いで作ったデッキリストとか、大抵検証中にボツになってるし。
だから、誰かの《タッサの信託者》を不発させる可能性の方が高いかもしれない。多くの場合、《タッサの信託者》はゲームの後半にキャストされるからだ。
もちろん《タッサの信託者》側のプレイヤーは《機械の母、エリシュ・ノーン》を除去する手段を用意しているだろうけど、それでも《機械の母、エリシュ・ノーン》は1~2ターンの猶予を稼ぐことはできるんじゃないだろうか。
統率者において脅威となるのは、この2枚だけではない。
登場時能力を持ったカードは統率者において非常に人気があるので、人気がある以上WotCのゲームデザイナーは登場時能力のあるカードをデザインし続けるだろう。
対戦相手が「すごい数の何か」をしようとしているのを妨害したいなら、《機械の母、エリシュ・ノーン》を使うのが一番だ。
性能面で、《機械の母、エリシュ・ノーン》をプレイする理由はたくさんある。
非常に強力なカードで、低いコストではないにせよ、破格のコストパフォーマンスであることは確かだ。
このカードは既存のデッキに雑に突っ込むだけで、デッキを強化してくれることだろう。
だけど、それは良いことばかりではない。
タッサの信託者
クリーチャー - マーフォーク・ウィザード 1/3 タッサの神託者が戦場に出たとき、あなたのライブラリーの一番上からX枚のカードを見る。Xはあなたの青への信心に等しい。そのうち最大1枚をあなたのライブラリーの一番上に置き、残りをあなたのライブラリーの一番下に無作為の順番で置く。Xの値があなたのライブラリーにあるカードの枚数以上であるなら、あなたはこのゲームに勝利する。(あなたの青への信心とは、あなたがコントロールしているパーマネントのマナ・コストに含まれる{青}の総数である。) |
6000文字
悪いところ
《機械の母、エリシュ・ノーン》の長所と短所は表裏一体で、長所であるところが見方を変えれば悪いところでもある…そんなカードになっていると思う。
もちろん、「悪い」というのは性能面で不足があるとかそういうことではない。前述の通り、このカードは本当に強力だ。
つまり、私が言いたいのは「統率者というフォーマットにとって必ずしもいいカードとは言えない」ということだ。プレイパターンだったり、デッキ構築だったり、あるいは将来のカードのデザイン領域だったりに問題をきたしそうなデザインのカードだと思う。
ここから議論を展開していく前に、すべてのカードが統率者のために、あるいは統率者を意識して作られているわけではないことは確認しておこう。
それはわかっている。
大筋のストーリー展開をみるに、新らしいエリシュ・ノーンのカードが作られる予定だったことは明らかだった。
実際、ストーリーの都合上、新しいエリシュ・ノーンは作られる必要があったのは確かだ。
それはそうなんだけどさ、こんなデザインで作られる必要はなかったとも思うんだ。
うーん、気持ちは分かるんだけどさ、ナンセンスな指摘だと思うんだよな。
だってWotCが「このテキストが一番エリシュ・ノーンにふさわしい」と判断したわけだろ?
だってWotCが「このテキストが一番エリシュ・ノーンにふさわしい」と判断したわけだろ?
統率者のことを少しも顧みないデザインだと感じられて、それが嫌だったのでしょうね。
シェルドンが統率者ルール委員会のメンバーであり、統率者に人生の多くの時間を費やしている人物であることを加味すればその気持ちも分からなくはありません。
シェルドンが統率者ルール委員会のメンバーであり、統率者に人生の多くの時間を費やしている人物であることを加味すればその気持ちも分からなくはありません。
なるほどなぁ…
でも酷いカードだったなら禁止にすれば良くないか?
むしろそれがルール委員会の仕事だろ?
でも酷いカードだったなら禁止にすれば良くないか?
むしろそれがルール委員会の仕事だろ?
禁止で解決したくない思いがあるのかもしれませんね。
悪いところ ― 汎用性が高すぎる
私たちが統率者戦ルール委員会(Commander Rules Committee)として幾度となく言及しているように※、カードの汎用性が高すぎることは統率者というフォーマットにおいてマイナスなことであると考えている。
ひとつのカードで複数の戦略を模索できる楽しさがある反面、本来多彩であるべき多くのゲームで同じ要素を出現させてしまう問題を孕んでもいるからだ。
汎用性が高いことは魅力だが、一方で私たちプレイヤーに実質的なコストを課してしまう。
「白をプレイするのであれば、《機械の母、エリシュ・ノーン》をプレイしない理由はない」というところまで行くと、実質的なデッキスロットを1枚減らしてしまうことになる。
デッキを組む前に20枚以上のカードが確定している場合、不健全な状態にあると言えるだろう。プレイヤーの創造性が介入する余地が犠牲になっている。
それは性能を第一に考えるフォーマットなら良いことだが、統率者はそういうフォーマットじゃない。
デッキに雑に加えるだけでデッキが強化されるというのも、汎用性の高いカードの物議を醸すところだろう。
いままでやっていたことをそのままやっているだけで報われるようなカード(私は今《水底のドルイド、タトヨヴァ》を見ながら話している)は、統率者にとって健全ではないだろう。《機械の母、エリシュ・ノーン》も似たようなカードだ。
私たちのデッキは本当にたくさんの登場時誘発を抱えている。
{4}{白}というタッチしやすいマナコストで、しかもデッキのスロットを1枠割くだけで、これまで使っていたデッキが大幅に強化できる。
私たちのデッキは望ましくない進化を遂げてしまったのだ。
夜の統率者の時間をスタックスデッキにすり潰されるのは御免だが、よく刺さる対抗札が何枚か見つかると信じている。
{4}{白}というタッチしやすいマナコストで、しかもデッキのスロットを1枠割くだけで、これまで使っていたデッキが大幅に強化できる。
ここからが、一番物議を醸しているところですね…
お…おぉ…ここからが「本編」か。待ちわびたな。
ちょっと、そんな言い方ダメですよ。
統率者ルール委員たちが言っていたこと
このカードはデザイン中にすでに見ていたんだ。
通常、私たちはファイルを見てコメントを書き、1~2週間以内にメンバーの合同で送ることになっている。
だけど今回、私はその慣例に反して、このカードを見てすぐに「お願いだから、どうかこのカードは絶対に印刷しないでほしい」とメールを送ったんだ。
その後すぐに、そのようなことをしたのが私だけではなかったことが判明した。
もちろん、後のメンバー共同でのフィードバックの中で、これは統率者にとって不健全なカードであることを確認した。
このカードがポジティブなゲーム体験をもたらすようにはとても思えない。
危険なデザインで、マナ・コストの面でも優遇されている。
このカードはメインセットのカードであり、統率者向けの製品でないことは分かるし、そもそもすべてカードが統率者を考慮してデザインされる必要がないというのが私の認識でもある。
しかし、デザイナーやデザインチームがまるで統率者が存在しないかのようにカードのデザインをするのは、浅はかだと指摘したい。
さらにもうひとつ、このカードのデザインが許されることで、今後のカードのデザインに影響を与えてしまう懸念もあるのだ。
最後に良いニュースを加えるなら、「WotCは必要なカードをデザインできる」ということと、「《機械の母、エリシュ・ノーン》が問題を起こした場合に救済措置となるカードを私たちは知っている」ということだろうか。
…とは言ったものの、救済措置に「なる」カードがあるわけではなく、救済措置に「なる可能性が高い」カードを知っているというだけなので、確実にそれらが救済措置として機能するかは定かではない。
WotCが《機械の母、エリシュ・ノーン》対策としてデザインしたカードが、実際のプレイで機能するかも不確かだ。
以上、統率者ルール委員会の運営や戦略的な考え方について考察を述べたが、ここで述べたことのほとんどはまったく私の個人的な意見であることをお断りさせていただく。
通常、私たちはファイルを見てコメントを書き、1~2週間以内にメンバーの合同で送ることになっている。
危険なデザインで、マナ・コストの面でも優遇されている。
8000文字
なんだこれ…!?!?
ヤバいですよね…
え、ちょっとまって。
WotCは統率者ルール委員会のフィードバックを貰いながら通常セットのカードをデザインしてて、しかもそのフィードバックを無視して突っ切った…???
WotCは統率者ルール委員会のフィードバックを貰いながら通常セットのカードをデザインしてて、しかもそのフィードバックを無視して突っ切った…???
…ということになりますね。
え、え…?
なんか最後に超弩級の情報を投下してないか?
ルール委員会はこの記事をリリースして大丈夫なのか!?
なんか最後に超弩級の情報を投下してないか?
ルール委員会はこの記事をリリースして大丈夫なのか!?
大丈夫かは分かりません。でも、これはあくまでシェルドン・メネリーによるリリースであって、ルール委員会によるオフィシャルなリリースではないので…
いやでも、がっつりルール委員会の他の面々を巻き込もうとしてなかったか…??
さいごに
統率者のルール改訂について、いくつか知っておいてほしいことがある。
まず第一に、いきなりカードを禁止したりすることはないということだ。
《呪文追い、ルーツリー》は例外的な状況にあった。
《呪文追い、ルーツリー》は例外的な状況にあった。
第二に、私が禁止改訂を行うのに、他のメンバーを説得する必要があるということだ。
私はこのカードは統率者にとって間違いなく脅威であると考えているが、私の独断で禁止になることはない。
今後1~2シーズンの間にこのカードが禁止に値するものか注視する。もし警戒されていたような影響がなければ、何も心配する必要はない。
さいごに、統率者ルール員会のDiscordサーバー上に私の記事について議論するためのチャンネルがあることを忘れないでほしい。《機械の母、エリシュ・ノーン》だけのためのチャンネルを立ち上げる可能性はかなり高いだろう。
その他にも、本当にありとあらゆる話題について話せるチャンネルがあるから、是非一度我々のサーバーに来てほしいね。
それじゃあ、また。
その他にも、本当にありとあらゆる話題について話せるチャンネルがあるから、是非一度我々のサーバーに来てほしいね。
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不足した議論
シェルドンさんの記事を見て、クノッサさんはどう思いました?
不十分だと思ったな。
議論において、いくつかのポイントで掘り下げが足りない。
議論において、いくつかのポイントで掘り下げが足りない。
なるほど。具体的には…?
- そもそもなぜ《機械の母、エリシュ・ノーン》がこのデザインで作られるべきではないのか?
- リリース後に禁止改訂で解決する方法ではなぜいけないのか?
ここに触れてなかっただろ。
でもここが明らかにならないと、「エリシュ・ノーンが統率者にとって脅威的なデザインであること」と「エリシュ・ノーンがこのデザインで作られるべきでない」という主張とが論理的に架橋されない。
でもここが明らかにならないと、「エリシュ・ノーンが統率者にとって脅威的なデザインであること」と「エリシュ・ノーンがこのデザインで作られるべきでない」という主張とが論理的に架橋されない。
たしかに…
もしかしてシェルドンのそれが「カードの持つ社会的価値」だったのかもしれませんね。
もしかしてシェルドンのそれが「カードの持つ社会的価値」だったのかもしれませんね。
アタシもそう思う。
だけど、抽象的かつ主観によって揺らぐ概念に、論理の架橋を担わせるのは妥当じゃない。
だけど、抽象的かつ主観によって揺らぐ概念に、論理の架橋を担わせるのは妥当じゃない。
ということは、シェルドンの考える「カードの持つ社会的価値」を想像していけば、彼の真意が見えてきそうですね。
10,000文字
そもそもカードの社会的価値とは?
シェルドンは、カードの選択の余地が狭められることを理由に、汎用性の高いカードを危険視していました。カードの選択の余地が究極まで狭められた結果生じるのは、みんなのデッキが同じになること。シェルドンはそれを危惧しているわけで、逆にみんなが違うデッキを握っている状態を是と考えているのでしょう。
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統率者としてのノーンが禁止されるのはヤバいんじゃないか
ここまで掘り下げて、統率者カードの《機械の母、エリシュ・ノーン》が禁止されるのはやはり好ましくない事態なのではないかと、私自身そう考えるようになりました。シェルドンは記事中具体的に言及していませんでしたが、好きなキャラクターで戦うこともカードの社会的価値(≠性能による価値)のひとつでしょう。
- エリシュ・ノーンが人気なキャラクターであること
- ギミック的に非常に魅力的な統率者であること
- 非常に多くのカードとシナジーし、デッキのコアになれるカードであること(≒禁止によってデッキが意味的・戦略的に瓦解する可能性が高い)
プレイヤーに覚悟をしておいてもらうことで、プレイヤー各々に禁止された場合の(主に経済的な)ダメージをコントロールしてもらうのが一番遺恨が残らないように思います。
すごく統率者にしたいけど、ほぼほぼ禁止カードになるであろうレジェンダリーって、購入資金のアリジゴクみたいだな…
統率者が禁止されるとデッキの構築費用が丸々吹っ飛びますからね。
でも購買意欲を刺激するという罠…
でも購買意欲を刺激するという罠…
公式から警告を発してくれれば、プレイヤーの自己責任になるんだがな。
12,000文字
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統率者としての《機械の母、エリシュ・ノーン》を掘り下げる
さいごに、統率者《機械の母、エリシュ・ノーン》がデッキ構築において持つ魅力を掘り下げていきます。ここでカードの魅力を掘り下げることが、これまで扱ってきた議論の内容を間接的に強化していくものと考えております。統率者枠に収まる《パンハモニコン》である
おそらくこれが最もデッキビルダーの心をくすぐる魅力なのではないでしょうか。
パンハモニコン
アーティファクト {4} アーティファクトやクリーチャーが戦場に出たことによりあなたがコントロールしているパーマネントの誘発型能力1つが誘発するなら、その能力は追加でもう1回誘発する。 |
白単で完結するループ
ちなみにですが、《修復の天使》と《守護フェリダー》と《機械の母、エリシュ・ノーン》の3枚で無限ループに突入できます。- 《修復の天使》で《守護フェリダー》をブリンク
- 《守護フェリダー》の登場時誘発が《機械の母、エリシュ・ノーン》によって二度誘発し、《修復の天使》と「任意のパーマネント」をブリンク。
- 《修復の天使》の登場時誘発が《機械の母、エリシュ・ノーン》によって二度誘発し、《守護フェリダー》と「任意の味方クリーチャー」をブリンク。
- 以降ループへ
一番オーソドックスかつ実用的なコンボですね。
《機械の母、エリシュ・ノーン》が統率者であるおかげで、事実上の2枚コンボになっているのもポイントです。
《機械の母、エリシュ・ノーン》が統率者であるおかげで、事実上の2枚コンボになっているのもポイントです。
あと《守護フェリダー》がパーマネント指定でブリンクできるのもいいな。
勝ち筋になる無限ブリンク先を意識して用意しなくても大丈夫そうだ。
勝ち筋になる無限ブリンク先を意識して用意しなくても大丈夫そうだ。
何もなければ土地をブリンクしてマナが出せますしね。
《陽焼けした砂漠》から無限ダメージを飛ばしてもいいしな。
- 《刃の接合者》を《変異エルドラージ》でブリンク。
- 《刃の接合者》の登場時誘発が《機械の母、エリシュ・ノーン》によって二度誘発し、ゴーレムトークンが2体生成される。
- ゴーレムトークン2体を《アシュノッドの供儀台》で生贄に捧げ、{◇}{◇}{◇}{◇}を得る({◇}=無色1マナ)
- {◇}{◇}{◇}を使って再び《変異エルドラージ》で《刃の接合者》をブリンク。
- 以降ループ。ループを繰り返すたびに余剰の{◇}がマナプールに貯まっていくので、そのマナを使って任意のクリーチャーを無限ブリンクできる。
- 《悪鬼の狩人》で《栄光の目覚めの天使》を追放。
- 《アシュノッドの供儀台》で《悪鬼の狩人》を生贄に捧げる。{◇}{◇}を得る。
- 《悪鬼の狩人》の死亡時誘発で追放された《栄光の目覚めの天使》が戦場に戻る。
- 《栄光の目覚めの天使》の登場時誘発で《悪鬼の狩人》を墓地からリアニメイトする。
- 《悪鬼の狩人》の登場時誘発で《栄光の目覚めの天使》を追放。
- 以降ループ。《機械の母、エリシュ・ノーン》がいれば、《悪鬼の狩人》で《栄光の目覚めの天使》の他にもう一体クリーチャーを追放し、そのクリーチャーを疑似的に無限ブリンクさせることができる。ループ過程で生成された無限マナを勝ち筋にしてもよい。
14,000文字
色々ループに組み込める感じか?
流石に《パンハモニコン》ですから、悪さをしやすいですね。
でも、白単色統率者ゆえに白単構築を強制される制限はシビアだなと感じました。
でも、白単色統率者ゆえに白単構築を強制される制限はシビアだなと感じました。
なるほどな。
流石の《パンハモニコン》といえど、白単色だとコンボのレパートリーも少なくなるか。
流石の《パンハモニコン》といえど、白単色だとコンボのレパートリーも少なくなるか。
ですね。
じゃあ、デッキで使うのが主になるかな。
まだ確かなことは言えませんが、仮にデッキから使用するのであればサーチのひと手間が必要になるので凶悪性は薄れると思います。色拘束のせいで無限ループへのルートもかなり制限されますし…
《ドラニスの判事》とか《タッサの信託者》とか、そのレベルでヘイトを集めるカードが1枚増えた格好になるのではないかと思います。
《ドラニスの判事》とか《タッサの信託者》とか、そのレベルでヘイトを集めるカードが1枚増えた格好になるのではないかと思います。
対処困難性
タフネスが7点もあるため《邪悪な熱気》すら回避でき、登場時誘発による除去も受け付けない堅牢なクリーチャーなので、一度だれかが着地させたら誰も対処できないまま《機械の母、エリシュ・ノーン》の独壇場になってしまう可能性が高いことが気になりました。
《機械の母、エリシュ・ノーン》は妨害だけでなくサポートする能力も強力だから、キャストしたプレイヤーがひとり勝ちしやすいのか…
…で、それをやめさせようと、他のプレイヤーも《機械の母、エリシュ・ノーン》をキャストすると、いよいよゲームから登場時誘発が消えちゃうという。
なるほどな。そうなればデッキから登場時誘発を抜けばいいだけなんだが、統率者戦は好きなカードが使えないフォーマットになっちゃうかもな。
登場時誘発の採用を控えるとなると、構築の自由度はガクッと下がってしまいますからね…
広告
総括
元記事を通読して、実際に《機械の母、エリシュ・ノーン》と相性の良さそうなカードを探したりして思ったのが…
…思ったのが…?
「まぁまぁ言いたいことは分かる」ということですね。
まぁ、たしかにそうだな。
でも別にあらかじめリリースしないように働きかける必要はなかったんじゃないか?
でも別にあらかじめリリースしないように働きかける必要はなかったんじゃないか?
ですね。リリース後に粛々と禁止すればよかったように思います。
そうなんだよな。
色々危惧する気持ちは分かるけど、「印刷しないようメールで請願した」とかそういう内幕も明らかにしない方が賢明だったように思うし…
統率者戦をないがしろにしたようなカードデザインに驚愕した気持ちは汲んでやりたいが。
色々危惧する気持ちは分かるけど、「印刷しないようメールで請願した」とかそういう内幕も明らかにしない方が賢明だったように思うし…
統率者戦をないがしろにしたようなカードデザインに驚愕した気持ちは汲んでやりたいが。
今回の記事のもっとも大きな意義は《機械の母、エリシュ・ノーン》のデザイン上の問題的を周知させたことよりも、むしろルール委員会がこのカードを危険視しているという事実が周知されたことでしょうか。
禁止になるかもしれないリスクが周知されたわけだから、プレイヤーにとっては良かったよな。
WotC側とつながりがあるのなら、スタンダード以外のフォーマットで禁止にするかもしれない「要注意カード」の存在を告知するシステムを作ってもいいのにな…と思いましたね。
ゲームデザイナーとルール委員会とでどうしても意見を擦り合わせられなかった時の保険として、緩衝地帯を用意しておくわけだな。
ですね。
今回の一件でWotCは何か体制の補強を行うかもしれません。 2023のWotCに期待ですね…!
今回の一件でWotCは何か体制の補強を行うかもしれません。 2023のWotCに期待ですね…!
がんばってなWotC…マジで。
これ全然大事な話じゃないんだけどさ…この記事のタイトル、本当は「シェルドン・メネリーはなぜ新たなノーンに『ノー』を突き付けるのか?」にしようとしてただろ?
ま…まさか、そんなワケないじゃないですかー!!
恐れをなしてダジャレをやめて、その痕跡が残ってるの…
見ているこっちも、ちょっと恥ずかしくなっちゃうなぁ?
見ているこっちも、ちょっと恥ずかしくなっちゃうなぁ?
ちーがーいーまーす!
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